サンガの寅さん

中学生が理解、批判できる、をモットーとしていますが、記事が健全な中学生には、不適切な内容のこと、もあります

難民と避難民

 「ウクライナ避難民」という発言に不自然さを感じていました。「避難民」というと、住んでいるところで災害などに逢われて、やむなく安全なところへ移ってこられた、という状況を思い浮かべるからでしょう。しかし、それほど深くは考えていませんでした。

 日本も加盟している難民条約上の「難民」は、元々は自分たちの住んでいた国から人種や宗教、政治的意見などを理由に迫害を受けている場合を想定している。岸田首相の16日の会見でも、「難民」ではなく「避難民」という表現が使われていた。
  それでは、他国の侵略から逃れた市民は「難民」に該当しないのか。渡辺弁護士は「今のウクライナの状況を見れば、まずは迫害の恐れを確認し、難民としての受け入れを進める必要がある」と話す。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の「ガイドライン12」(16年)では、難民発生原因となる「武力紛争および暴力の発生する状況」は「二つ以上の国家間」における事態も含まれると明記されている。
 ならば、なぜことさらに「難民」と「避難民」を区別するのか? 「ウクライナの人たちを難民と認めてしまうと、これまで難民としての保護を十分に尽くしていないアフガン難民やミャンマー難民との対比が明らかになるのを恐れているのでしょう」と渡辺弁護士は指摘する。
 3月15日の米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は、ウクライナ情勢の関連記事の中で、<世界で最も難民に冷たい国の一つ>である日本がウクライナから47人を受け入れたことを報じている。記事には、<日本政府は、日本に家族や知人がいるウクライナ“避難民(evacuees)”を受け入れ、90日のビザを与えると述べた>とあり、これほどの人道危機にあっても難民(refugees)ではなく「避難民」という表現にこだわり続ける日本政府を皮肉るような内容になっている。
        毎日新聞 2022/3/22

 

 なるほど、そうだったのか、と思いました。「難民」はより「逃れてくる」、という事態の深刻さが大きいのだと思います。
 引用中にある「ガイドライン12」を検索しました。『別冊-難民保護に関する国際基準.pdf』より「国際的保護に関するガイドライン12 2016/12/2」の当該しているであろう部分を引用します。
 

   44  ……以下にあてはまる者に難民としての保護を提供するとしている。
 「外部からの侵略、占領、外国の支配若しくは国籍国の一部若しくは全部における公の秩序を著しく乱す事件のゆえに出身国または国籍国外に避難を求めるため、常居所地を去ることを余儀なくされた者」

非難を強いられる状況
   54 該当する状況は「外部からの侵略」によって引き起こされる。……これらの状況には、他国の武装勢力の(構成員の)存在または外国の武装勢力による襲撃を原因とするものを含め、外部の者の関わりにより激化したまたは近隣諸国から拡がって武力闘争が含まれる。
   55 ……武力紛争および暴力の発生する状況は「外国の支配」を伴うものであったり、また外国の支配の結果であり得る。これには、一つまたはそれ以上の他国(の主体)、国家の連合または国家が管理している国際機関による国家に対する政治的、経済的または文化的支配が該当する。

 とのガイドライン(指針)を示しています。国家間の紛争という事態も含まれます。「ウクライナへの侵攻」ではウクライナの公の秩序を著しく乱していますので、居住地から逃れてきた人たちを、「難民」であるとするのが、正当であるように思います。「避難民」とは疎開してきた人たちなのではないでしょうか。安全が確保されれば戻ろうとするでしょう。ということは、避難民として受け入れた我が国は、安全が確保されれば、生活基盤を失ってしまった人たちをウクライナへ帰国してもらうことを優先する方針なのでしょうか。
 
 朝日新聞3月29日での「ウクライナ侵攻」記事での二つの記載をみれば、以下のような「難民」と「避難民」の使い分けがスタンダードなのだなと理解できます。

 国連難民高等弁務官事務所UNHCR)によると、人口約4100万のウクライナで、2月24日のロシアの侵攻後、国外に逃れた人は3月26日時点で約382万人にのぼる。約1カ月でこれほど大勢の人が難民となるのは第2次世界大戦以降で初めてという。
  
 ロシアによる侵攻で家を追われる人たちが増え続けているウクライナで、国外から避難民の支援に駆けつける人も少なくない。私財を投じて「何かの役に立ちたい」と個人的に奔走する人もいる。
 避難民がウクライナ各地から集まる西部の都市リビウ