サンガの寅さん

中学生が理解、批判できる、をモットーとしていますが、記事が健全な中学生には、不適切な内容のこと、もあります

夫婦別姓の家庭崩壊

週刊新潮2月6日号で、『「杉田水脈」論外でも問題は「夫婦別性」の家族崩壊』という特集があった。確かに、「夫婦同姓が結婚の障害となっている」という玉木雄一郎国民民主党代表の発言に対して「だったら結婚しなくていい」と野次で済ますというのは論外であり、結婚という特権的な制度について問題提起するべきであろう。

その特集で、趣旨に沿うように要約されたのか、つまみ食い的な引用なのかは不明だが、疑問を呈さざるをえない引用があった。以下に引用とコメントをあげてみる。

…引用…
私は家族問題のコンサルタントとして、これまで四万組近くの家族や夫婦の相談に乗ってきましたが、その経験から言えるのは、苗字くらい一つに決められない夫婦が家族としてうまくやっていけるわけがない、ということです。
                      池田ひろ美(東京家族ラボ主宰)
                      
「四万人近くの家族や夫婦の相談」とあるが、家族や夫婦であるということは、現民法では「同姓」でなければならない。ということは、四万組近くが、問題をかかえ相談に来ているのであろうから、苗字を一つに決めることができても家族としてうまくやってゆけるとは限らない、ということではなかろうか。なかには、相談者たちは元の苗字にもどることの困難さを自覚しているがゆえ、問題に悩んでいるというケースもあるだろう。

…引用…
……しかし夫婦別姓が可能になり、さまざまな苗字が入り込む状況になれば、祖先もあいまいになり、信仰も薄まる恐れがある。家族の連続性が失われれば、墓の継承もままなりません。そのような事態が、日本人の倫理観や道徳観に悪影響をおよぼすことは、間違いありません。
                     百地章日本大学名誉教授)
                     
家族の連続性とは意味不明である。グーグルで検索すると、家族とは「同じ家に住み生活を共にする、配偶者および血縁の人々」との定義がトップにある。その連続性とは配偶者であり、親子であるという位置づけの継続ということなのだろうか。それでは「人々のまとまり」としては家族の関係性を無視し、形骸化したものにはならないか。くわえて、祖先を考慮に入れるのだから、それは「家の連続性」でなければならない。
そして、日本人の倫理観や道徳観に影響しているとしている墓に象徴される祖先を祀ることでの信仰は、江戸時代の「寺請制度」の強制にはじまるものであり、そこからはみ出してしまえば「村八分」的な扱いを受けていたようだ。それに先祖代々を受け継ぐことが可能なのは有力者だけで、庶民に可能であったとは思われず、よくて檀那寺にお任せ状態であったろう。

…引用…
夫婦別姓を認めると、家族の戸籍に二つの氏が生まれ、氏はファミリーネームではなく、単なる固有の名になってしまいます。夫婦別姓を認めないのは違憲かどうかが争われた裁判があり、15年の最高裁の判決は合憲でした。判決文には”氏をその個人の属する集団を想起させるものとして一つに定めることにも合理性がある”とあります。帰属意識や一体感につながるファミリーネームの喪失を軽視すべきではありません。
                          八木秀次麗澤大学教授)
                          
ここでは、姓・氏・ファミリーネームそして「固有の名」と同一のものを用語で使い分けているように見受けられる。「氏」は「姓」を言いかえているだけだろうが、ファミリーネームは家名という意味合いだろう。そうであるならば歴史的にみても「氏」=「ファミリーネーム」とはいえない。それは、法務省ホームページの「我が国における氏の制度の変遷」見ればよく分かる。以下にコピペしておく。

徳川時代
一般に,農民・町民には苗字=氏の使用は許されず。

明治3年9月19日太政官布告
平民に氏の使用が許される。

明治8年2月13日太政官布告
氏の使用が義務化される。
※ 兵籍取調べの必要上,軍から要求されたものといわれる。

明治9年3月17日太政官指令
妻の氏は「所生ノ氏」(=実家の氏)を用いることとされる(夫婦別氏制)。
※ 明治政府は,妻の氏に関して,実家の氏を名乗らせることとし,「夫婦別氏」を国民すべてに適用することとした。なお,上記指令にもかかわらず,妻が夫の氏を称することが慣習化していったといわれる。

明治31年民法(旧法)成立
夫婦は,家を同じくすることにより,同じ氏を称することとされる(夫婦同氏制)。
※ 旧民法は「家」の制度を導入し,夫婦の氏について直接規定を置くのではなく,夫婦ともに「家」の氏を称することを通じて同氏になるという考え方を採用した。

昭和22年改正民法成立
夫婦は,婚姻の際に定めるところに従い,夫又は妻の氏を称することとされる(夫婦同氏制)。
※ 改正民法は,旧民法以来の夫婦同氏制の原則を維持しつつ,男女平等の理念に沿って,夫婦は,その合意により,夫又は妻のいずれかの氏を称することができるとした。

追記
夫婦別氏制について、これは明治政府が取り決めたことで、明治初期ではまだ為政者は武士的な慣習を拠り所としていたのだろうから、氏ではなく家名を重視していた。対して多くの庶民にとっては、家名なんてないから別氏ではややこしいだけ。