サンガの寅さん

中学生が理解、批判できる、をモットーとしていますが、記事が健全な中学生には、不適切な内容のこと、もあります

世界のニュースを日本人は何も知らない

日本人の国際感覚の希薄さを象徴するのは、中国の人名についてだと思う。中国の最高指導者である「習近平」総書記にしてもこれは日本語表記であり、「しゅうきんぺい」も日本語読みである。「シュウキンペイ」といっても世界ではだれのことかわからない。そして韓国・朝鮮人についても、「金大中」元大統領をかつては「キンダイチュウ」今は「キムデジュン」と呼んでいるが、日本語表記は「金大中」のままである。同じ漢字文化圏に属しているので、ということなのだろうが、本を読んでいても人名はフリガナがなければ読みがわからないし、区別がつけにくい。
ということは欧米中心視点で書かれている本書ではふれられていない。

著者のスタンスは、
…引用…
 アフリカ諸国ではこうした社会システムが構築されていないことが、貧困や内戦から抜け出せない大きな原因となっています。植民地化で確立されてしまった略奪の構図が、独立した現在も変わらず現地の人たちを苦しめ続けているのです。
 そのような痛ましい事実が、日本ではほとんど知られていないことが伝わってくるシーンが、日本の某番組から垣間見{かいまみ}えたことがありました。その番組には、ナイジェリア出身で格闘家兼タレントのボビー・オロゴンさんと、その他アフリカ各国出身の外国人タレントが出演していました。普段はとぼけた外国人を演じている彼らは、じつは各国のエリートであり、英語や部族語のほかにフランス語や日本語まで話す優秀な人びとです。
 私が驚いたのが、出身国が異なる彼らがフランス語を使って会話をした際に、出演者たちが茶化して大笑いした場面です。非常に残念な気持ちでいっぱいになりました。
                                  (四七頁)
                                  
歴史や状況の知識によって現状を認識し判断する、というところにあるように思う。

 (「こうした社会システム」とはインフラや教育、医療に投資される仕組み。)
  
しかし内容といえば、残念ながら項目の羅列でしかないという感が否めず、「そうなの、それで?」との感想しか持てない記述が多く感じる。そして、「世界の」として彼女が挙げているのは、主体的地位にある主要国・者でしかなく、アフリカ・親日国・イスラムは主要国らにとってのものへと従属されている。どうも「外からの視点を提供し、さまざまな気付きのヒントを得てもらうための指南書」にはなっていないようだ。

「世界の」ではなくても世の中の「ニュース」などの「話題」を知ろうとしたり、関心を持ったりするのには、個別的に事項に触れているだけでは「世界の真実に迫」れない。とりあえずは基礎的な知識がなければ役に立たない。そのせいだろうか、彼女が日本人を「ぬるま湯のゆでガエル」と酷評せざるを得ない心情はよく理解できるが、方法はどうかと疑問に感じる。

先の引用文について少し。
アフリカ各国出身のタレントたちを笑った出演者たちやそれを見て楽しんだ視聴者が一定数いるというのは、すべての人たちが教養によって認識を向上させようとしない限り変えられない現実だ。それはどの国でも似たような状況であろう。問題はそのようなシーンが番組内で成立してしまうことにあるといえる。つまり責任者の倫理的な検閲意識の欠如にある。

               谷本真由美著 ワニブックスPLUS新書 2019年