サンガの寅さん

中学生が理解、批判できる、をモットーとしていますが、記事が健全な中学生には、不適切な内容のこと、もあります

入管法改悪だけ?

権力などが行う政治活動への抗議や異見を唱えることは、特定者層の不利益にならない限り、もっと身近になるべきだ。それは私たちに「直面している問題」を周知させてくれる。その行為が、案件への認識不足に端を発するものでも構わない。親切な人はおられるもので、適切なアドバイスを授けてもらえることになるかもしれない。問題提起として有効な手段だと思っている。

二月十九日に「出入国管理及び難民認定法等の一部を改正する法律案」が閣議決定され、国会に提出された。これは法務省出入国在留管理庁の権能を強化するものであるとして、「改悪である」との抗議の声が広がっている。その要因となっているのは、
 2019年の難民申請者数が10375人に対して認定者数が0.4%の44人
 法務省の施設での長期拘留
 不安からの自殺・自殺未遂
 スリランカ女性ウィシュマ・サンダマリさんの施設内で死亡
などであろう。(国際的に非難されたカルロス・ゴーン被告の長期拘留もあった)

それらを改善する方策として、出入国在留管理庁はホームページで

(3) 職員の調査能力向上のための取組
 難民に当たるかどうかの調査を行う当庁職員(難民調査官)に対しては,UNHCR等の協力により,出身国情報の活用方法や調査の方法等に関する研修を行い,一層調査能力を高めていきます。

と表明している。これを机上での官僚的な判断を改めて、重い判断を下しているのだ、という自覚を持つ決意である、とも取れなくはない。


それに対して、藤崎剛人の以下のような指摘がある。

 「改正」案で特に問題視されているのは次の点だ。入国管理局に収容されている人々の中には難民のような、様々な事情があって国に帰ることができない人が多数含まれている。日本も加入している難民条約では、そうした人々の安全が確証されない限り、強制的に帰国させてはいけないことになっている。しかしこの法案では、そうした人々が強制送還を拒んだ場合に刑事罰を与えることが可能となる。さらに、条約に反して、外国人を一方的に強制送還することができる例外規定も設ける。
(略)
条約に従えば、難民認定を申請している期間は強制送還できない。しかし新法では、難民申請中の送還停止は2回までと制限が設けられている。何度も申請を繰り返して難民として認められた人も少なくない現状で、この規定を設けることは人道的にも問題が大きい。
(略)
……難民の庇護を体系的に定めたアジール法の語源は、聖なる領域における人身保護を定めた中世の制度に由来する。日本にも「無縁」などとよばれていたアジールのような制度はあって、歴史家網野善彦の研究によって一般的にも知られている。しかし現在、国を追われた難民たちにとって、日本はアジールではない。
(略)
入国管理局では狭い部屋に何人も押し込められ、満足な運動もさせてもらえず、食事も劣悪ということで、体調を崩す者が多発している。完全に病気になってしまった場合は仮放免されるが、治療費は自己負担であり、保険に入ることもできないため十分な医療にかかることができない人も多い。
(略)
このような非人道的な扱いを行っている国はほぼないといってよい。たいていの先進国では、ホテルとまではいかないが、最低限の文化的環境を有する宿泊施設が存在し、一定の制限はあれ外出も行うことができる。
(略)
入管法は改正すべきだ。しかし、それは法務省が主張する「不法残留」外国人が増えているという理由であってはならない。
  『入管法「改正」案、成立すれば日本は極右の理想郷になる?』
   2021年05月10日(月)06時31分 Newsweek

 改正という名の改悪およびその施行を疑問視しているが、問題はもっと根深い「私たちが暮らす日本社会の非人道性」にあると感じている。現行の入管法であっても突出して低い難民の認定率なのだから、法制度の問題ではないだろう。また当該する省庁だけの問題でもなく、かよう状況を許容している社会の問題である。


たとえば、難民などの社会的弱者が横断歩道を渡ろうとしている歩行者、私たちが走っている自動車とする。法規上は歩行者を優先しなければならないが、私たちは渡ろうとしている「歩行者」が見えない。いや、「渡ろうとしている歩行者」として視野に入ってこない。そのような存在(弱者)を想定できないからなのだろう。


人道主義とは弱者への「配慮」であると考えている。形式的なものは運用で形骸化できるが、実際の場で解消へ向けて実践してゆくのが課題であると思う。
さて、異議を訴えている人たちは、車上から横断歩道の歩行者へと、目が行き届いているだろうか。

自問しなければいけない。

(追記)調べても見つけられなかったので、「改正案」そのものは読んでいない。