未完の民主主義
民主主義サミットとはWikipediaによりますと、
2021年12月9日から10日にかてアメリカ大統領ジョー・バイデンが主催した、Web会議形式の仮想サミット。 目的は「国内の民主主義を刷新し、海外の独裁国家に立ち向かうためとされた。主題は「権威主義からの防衛」「汚職への対応と戦い」「人権尊重への推進」の3つであった。109の国家と2つの地域が招待された一方、中華人民共和国やロシア連邦などの国が除外された。
2つの地域とは台湾と欧州連合です。そして、このサミットには多くの批判が伴っていた、と記憶しています。私は、次の二つの点で大きな疑問を持っていました。
まず「民主主義」とは、対立を明確にするのではなく、少数者を取りこぼさずに「折り合い」をつけてゆく過程である、と考えています。それを掲げる会議に、招待するものと除外するものを選り分ける、というのは似つかわしくなく、あくまで参加を呼びかけるものでなければならないはずです。それでも、参加を拒否する側に対して、粘り強く交渉しても説得できなければ仕方ありませんが、排除はいただけません。そうでなければ、こちらは進んだ段階にあり、あちらは遅れているとして、まつろわぬ愚かな者を導くという、なんだか共産主義の前衛思想みたいな構図になります。
そして、権威主義や汚職と無縁であったり、人権尊重が成し遂げられている国が存在するのは寡聞にして知りません。これらはあくまで努力目標なのであって、現状がそうなのではありません。それへの同意を求めることへ、そして目標への軌道修正のためにも、外部を取り込んでゆくような形態が望ましかった、と残念に思います。
権威主義、汚職から離て、人権尊重を確立させるという「民主主義の価値観」は正しい。しかし、その価値観に賛同しない国も多くあります。ということは、私たちのものとされている「民主主義の価値観」は十分に成熟していない、まだまだ「途上にあるのだ」という認識が必要です。いや、いつまでも「未完の民主主義」としてあるのでしょう。
私たちは、法による平等と基本的人権の尊重という価値観を共有している同盟、などと上から目線ではなく、それは成し遂げられていないと謙虚に現実を受け止めなければいけません。
と、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻の報を受けて、悲観的な展開になるのを恐れて、頭をよぎったことについて記しました。
よく言われているように、テロ集団はあまりにも脆弱であるので、戦略の選択肢はほぼありません。しかし国家は強大で、自身を強引にでも正当化でき、戦略をめぐらすことに不自由はありません。ロシア国内でも抗議の声があがっている、との報道もありましたが、それもふくめて希望につなげてもらいたいものです。