サンガの寅さん

中学生が理解、批判できる、をモットーとしていますが、記事が健全な中学生には、不適切な内容のこと、もあります

増補 感想2211 その2

⑺予定日はジミー・ペイジ
やはりミーハーは良いと実感できる。それでポジティブであれるもの。そりゃ、予定日がジミー・ペイジの誕生日、それだけでワクワクする。何よりうらやましいのは、夫のさんちゃんの誕生日がマーク・ボランと同じってこと、私なら、それだけで人生得した気分になれる。これがミーハーの良いところ。けれど、残念なことに出産は予定日から遅れてしまう。予定日はジミー・ペイジってことで舞い上がり、なんだか他人事のようでもありながら、向き合わざるをえない妊娠・出産を経験する物語。読後、後日談として、ポジティブ「プレママクラス」の落ちこぼれ仲間であるスタイリッシュ妊婦の佐伯さんと「遅れちゃったけど、予定日はジミー・ペイジの誕生日だったんだよ」などと居酒屋で盛り上がっているところが思い浮び、ニヤケてしまった。
読了日:11月06日 著者:角田 光代
https://bookmeter.com/books/543834

 

⑻幸福の増税論――財政はだれのために (岩波新書)
勤勉、貯蓄という通俗道徳が支配的であった経済成長期、貯蓄は公共事業にまわされ、これがさらなる税収を生み、所得減税と公共事業の財源となり、増税はされなかった。このような財政の慣習のため、政府は税金を取らずにサービスを提供するものだと認識され、税の痛みを生みだす重要な原因となった。このシステムで弱者となるのは、前記の通俗道徳に従わなかったという自己責任だから、救済は後回しにされやすい。それを背景として、社会保障では自己の負担と給付の関係は明確だが、税は使われ方が見えない、自分の利益にとなる負担ではない、という猜疑心が政治不信によって生まれることとなる。重要なのは、公共のための国債の発行と増税は、貯蓄がどちらへ流れるか、向かい方の違いでしかない。ただ国債には利子が発生し、それは銀行へ流れる。
読了日:11月07日 著者:井手 英策
https://bookmeter.com/books/13246180

 

⑼資本主義の終わりか、人間の終焉か? 未来への大分岐 (集英社新書)
上からの選挙政治・政策立案を重視する「政治主義」とビッグデーターを活用する「アルゴリズム」による管理から、「何が私たちをより良い存在として機能させるものなのか」と問う道徳の必要への気付きを重視する。マイケル・ハートは言う。サンダースが新しい政治のうねりを起したとされているが、新しい政治運動が生み出したものが、サンダースのような政治家たち、だと。つまり、政治家は支持者のフィードバックを受けることで、運動の渦中に立ちあらわれる。その時に弊害となるのが、それぞれの立場があるのだから、相容れなくてもよいとする「相対主義」にかこつけた無関心。必要なのは単独であるしかないが、様々な価値観を「何か」に包摂しながら、より良い合意を求めてゆく政治姿勢、共通の土台がなければ、異なる立場の人たちの対話は成立しないのだから。
読了日:11月08日 著者:マルクス・ガブリエル,マイケル・ハート,ポール・メイソン
https://bookmeter.com/books/14168468

 

⑽すごい進化 - 「一見すると不合理」の謎を解く (中公新書)
子孫を残すのに無性生殖では単独で分裂・増殖が可能だが、有性生殖は対になって残してゆかなければならない、というコストを負担するが、親から半分づつの遺伝子を受け継ぐのだから、多様性はある。しかし多様性には正と負があるので、良い子孫を残すためには、適応した相手を選択しなければならない。美しいクジャクの羽は捕食者にも目立つので不利であるが、それでも生き残るのだから強い個体として選択される。クリサキテントウの幼虫は成長を犠牲にして捕食に有利な形質を獲得した。など環境に適さない個体は排除され、害でない多様性を内在させて環境に適応してゆく。つまり、生存に害のある遺伝子を持つものは、生き残り子孫を残すことは困難で、実害のないものが多様性として、潜在として受け継がれてゆき、それが環境変化などで危機に出会うと有効なものとして発露し、適応してゆく。それが進化。
読了日:11月09日 著者:鈴木 紀之
https://bookmeter.com/books/11777941

 

(11)韓国とキリスト教 いかにして“国家的宗教”になりえたか (中公新書)
韓国は歴史の大部分に中国の脅威があり、その「民族的苦難」がユダヤの「選民思想」と結びつくことを可能とし、キリスト教を受け入れる基盤となる。それを受け入れることは、儒教にはない内面的信仰を重んじることになり、キリスト教民族宗教と見なすことが可能となった。しかし当初、キリスト教は宗教ではなく、学として両班層に受容されたのだが、厳格な身分制度の下、社会的に抑圧されていた一般庶民に「神の下での平等を説くキリスト教の教えが」救いとなり、人々を惹きつけた、という。そして、一般庶民は素養として巫俗《ふぞく》信仰に慣れていたので、神への信仰というより、牧師を祭司と見る傾向が強く、それが個別教会主義の土台となり、教会の拡大が第一となってゆく。
読了日:11月09日 著者:浅見雅一,安廷苑
https://bookmeter.com/books/14705302

 

(12)生物はなぜ死ぬのか (講談社現代新書)
無性生殖の単細胞では分裂により若返り、優れた分裂能力を持つ。一方、有性生殖の多細胞生物は単体での分裂による若返りを断念し、世代交代に頼る。つまり性の成立で死が生じた。死の反対は生でなく性なのである。死というコストがあるのになぜ性を持ったのか、「多様性」の獲得のため、という。なぜ多様性は有利なのか。ある種が絶滅しても生物多様性があれば捕食関係は他の種が代替えになることによって保たれ、餌となるものが無くなることはない。任意の種においても、世代交代によって多様性が獲得され、環境への対応が幅広くなる。それを踏まえれば、進化は環境に迫られた選択という適応で起こるが、それは子世代による多様性を保持することで可能なのだから、多様性や可能性を失ってゆく親世代は「死」という選択を行っている、ということになる。
読了日:11月10日 著者:小林 武彦
https://bookmeter.com/books/17807858