サンガの寅さん

中学生が理解、批判できる、をモットーとしていますが、記事が健全な中学生には、不適切な内容のこと、もあります

舟を編む

先日『舟を編む』を古本市場で購入し、読了した。読み始めてすぐ、冒頭の六頁に『岩波国語辞典』にひらがなのルビが振ってあり、それに眼が留まりしばらく見つめ(見とれ)てしまっている自分に気が付いた。
2012年の本屋大賞の一位であり、作者の父親があの三浦祐之であるのを知り、読んだ時も同じ反応があったことを思い出す。「しをんはん、えらいことしやはりますな~、かないまへんわ」というような印象であろうか。何せ、岩波にひらがなのルビが振ってあるのですもの、ミスマッチの妙とでもいうべきでしょうか(キーボードで打ち込めば変換前はひらがなですが、操作の過程でしかなく、注目することはない)。漢字とひらがなが並んでいるのが重要なのでしょう。

私事ですが、小学生の頃は雑誌などは家で読んでいたけれども、読書はほぼ学校の図書館でしていたように思う(たぶん図書館で本を読む授業がきっかけ)。本屋に立ち寄るのも中学生になるかぐらいの時期だったと記憶している。立ち寄ってよく書架を眺めていて、たまに小遣いで文庫本を買うくらいでしたが、岩波文庫は別格でした。パラフィン紙のカバーで、星の数で価格が表示されていて、手に取るのもおそれ多い、ただただ眺めるばかりでした。
岩波書店のホームページによると)
1973年 (★星1つ)70円
1975年 ☆星1つ100円(在庫品は★1つ70円のまま)
1979年 ☆星1つ100円と★星1つ50円の併用,つまり50円刻みになる1981年4月の新刊から星で定価を表示する方式をやめ金額による表示になりました.…創刊60年にあたる1987年7月から毎月の新刊すべてにカバーをつけることになり,既刊のものについても順次カバーをつけ……
という時代経験があります。

そんなわけで、私にとって「岩波」とは知の権威を象徴するような「男性名詞」的なものであるのですが、それにひらがなのルビが振られていることで、「たおやかな」女性的要素が大きくなっている(性差別的要素のある発言で申し訳ない)。しかも、凛としたそのままで。読後、これってそのまま「林香具矢」のことじゃないの!と独り合点してうれしくなりました。