井上達夫の法哲学入門
「井上達夫の法哲学入門」(毎日新聞出版社・2015)は去年7月頃に読んだのだが、最近気になることがあって、あちこちを飛ばし読みしている。
「コスモポリタニズム」というのが正しいかどうかは別にして、ナショナルアイデンティティは重要視しつつも、それを超える規範的な制約というのはやっぱりある、
(154頁)
同書では例えば、貧困問題に接するに、イデオロギー欺瞞性(の自己肯定)にひたるのではなく、自己批判的な問題意識を強く持つのがグローバルジャスティスである、と指摘されている。しかしこれがなぜ、ナショナルアイデンティティに対して規範的な制約となるのだろうか。いきなり、自らとかけ離れた状況にある人たちに心を添わせよ、という規範をもちだされても、と思ってしまう。
ナショナルアイデンティティを超える規範的制約とは、自らのそれと同じく他者のそれも尊重せよ、となるのか。しかし私には、それを「超える」と呼べるのか、という確信は持てていない。