サンガの寅さん

中学生が理解、批判できる、をモットーとしていますが、記事が健全な中学生には、不適切な内容のこと、もあります

ネットリテラシー

今までから、SNSなどにおいてのいじめ・誹謗中傷は問題視されており、それを苦にして自殺へと踏み切ってしまう、という痛ましい事件も数多くあった。それらに対して、

 これについて、菅官房長官は25日午前の記者会見で、「心よりお悔やみ申し上げます。報道以上のことは承知しておらず、コメントは差し控えたい」と述べたうえで、「インターネットでの誹謗中傷の書き込みについては、ユーザー一人ひとりが他人を傷つけるような書き込みをしないよう、リテラシー向上のための啓発を行っていくことが重要だ」と述べました。

               NHK NEWSWEB 2020年5月25日 12時31分

 というような発言が繰り返されるのみであった。

 

しかしリテラシー向上の啓発がおこなわれていたかは疑問であり、結果はあらわれていない。発信者はそもそも流されて反応しているにすぎず、独り言をキーボードで打ち込んだという自覚もないのだろう。そんな彼らを「啓蒙」できるか疑問だ。

 

しかし、決してこのような事件が起こることがあってはならず、

民放の番組に出演し、3日前に死亡したプロレスラーの女性を非難する投稿がSNS上でされていたことを受けて、SNSの事業者でつくる団体が緊急声明を発表しました。嫌がらせや名誉毀損などの禁止事項の啓発を実施し、違反があった場合のサービスの利用停止などを徹底するとしています。
              NHK NEWSWEB 2020年5月26日 18時57分 

 という決意が真摯であるのを望むばかりだ。

 

今までの事件の経験からの積み重ねもあろうが、パンデミックによって、献身と感謝とバッシングが並存している状況で、社会が倫理的な問いに向き合わされており、それに敏感になっていることも大きな要因となっているのだろう。

SNSでの匿名性が問題視され、

高市総務相は26日、閣議後の記者会見で、女子プロレスラーの木村花さん(22)がSNS上で中傷を受けた後に死亡したとされる問題に関し、匿名で他人を中傷する書き込みをした発信者の特定を容易にするよう検討する考えを示した。「制度改正を含めた対応を、スピード感を持って行う」と述べた。
               読売新聞オンライン 2020/05/26 13:22 

 

との方針が表明されているが、それは個々の案件となるだろうから、現実的ではないと思う。SNSプラットフォームらにその社会的責任を負わせ、事業者間で情報を共有すればいい。発信者の把握はSNS事業者内部でなされるべきだし、社会的道義をどのように実践してゆくかは、賠償・公表も含め事業者判断でよいと思う。

公の機関で基準を設けて、それに従って対処してゆくのは、権力による規制につながる可能性がある。基準は各事業者の判断でよく、厳しさのレベルに差があってもそれが厳格である必要はない。発信者は自らの必要に応じて、プラットフォームを選べばよい。ただ問題が指摘されたときには、自信で決めたガイドラインであるから、事業者は責任を追及され対応を迫られる。

 

この木村花さんの逝去の報道にふれる中で、「自然淘汰」というキーワードが思い浮かんだ。例えば妻に先立たれ、病弱の子をかかえた男性の前に健康で魅力的な女性が現れたとしよう。みずからの遺伝子を残す手段としては、子を見捨てその女性との間に子をもうけるのが、正しい選択となる(子殺し)が、そのようなケースはまれでしかない。それは私たちにとって「自然淘汰」が関係、社会的安定を前提としているからなのであろう。

性淘汰という側面からみれば、木村花さんは自らの遺伝子を残さなかったので、生物的には淘汰されたことになってしまうが、それは性選択によってもたらされたものではなく、人類のみが特異な文化・社会を形成しているがゆえの、人間的なものの影響の結果なのである。

しかし、花さんは私たちに情緒面のみならず影響を及ぼす。これから私たちは、まだ生まれていない者たちをも含め「木村花」という存在・出来事がもたらす社会のなかで生きてゆく。ということは彼女の遺伝子(ミーム)を受け継ぐということでもある。その社会を「よきもの」とするために彼女の遺伝子を受け継ぐ、という選択の意志を強く持たねばならない。