サンガの寅さん

中学生が理解、批判できる、をモットーとしていますが、記事が健全な中学生には、不適切な内容のこと、もあります

ミャンマーではなく「ビルマ」を

二〇二一年二月一日にミャンマー国軍がクーデターを起こし、アウンサンスーチー国家顧問らが拘束されて以降、事態は深刻化の一方をたどってきている。

時間的には逆になるが、記事をあげる。

クーデター後の混乱が続くミャンマーで、18日夜、現地在住の日本人ジャーナリスト北角裕樹さんが治安部隊によって自宅から連行されるのを近所の住民が目撃し、現地の日本大使館が確認を急いでいます。
     NHK NEWS WEB2021年4月19日 10時07分

他国籍ジャーナリストが拘束される、という異常事態までが起こっている。外務省は「面会・開放」を求めているようだが、政府を含め、あまり強い態度に出ているように思えない。

NHK NEWS WEB 特集では『「エンジェルさん」の死が問いかけるミャンマー軍の非道』(2021年4月14日 11時30分)という記事があり、一人のデモ参加者の殺害の状況を克明に分析・再現している。

彼ら市民が軍事統制下で、良心に従う行動をとれていることは私たちには信じられないような勇気ある姿勢だ。

彼らの良心は、

ミャンマーで2月1日早朝、国軍がクーデターを起こし、アウンサンスーチー国家顧問兼外相やウィンミン大統領らを拘束した。ミャンマー各地では連日、大規模な抗議デモが繰り広げられている。日本でも、東京や大阪などで在日ミャンマー人による抗議デモが開かれた。デモ実施に際し、日本在住の1人のミャンマー人女性が、日本人に宛てたメッセージを紙に書いてSNSに投稿した。写真は2千回以上シェアされている。【 BuzzFeed Japan / 冨田すみれ子】

日本や国際社会に宛てたメッセージを日本語で書き、FacebookTwitterに投稿したのは、大阪在住のミャンマー人留学生、ウィンさん(22)。

東京や大阪などでのデモの様子が報道されると、ウェブニュースやYouTube動画のコメント欄に、応援する声だけでなく「ミャンマーに帰って抗議しろ」「なぜ集まって抗議するんだ」といったコメントも多く残された。

コメントを読み、そして母国で抗議の声をあげる人たちのことを思い「胸が苦しくなった」。

「悲しさや悔しさなど様々な感情がありましたが、どれだけミャンマーが今、危機的な状況にあるのか、日本では伝わっていないと思いました」

     Yahooニュース 2/11(木) 9:02

 という記事からも読み取れる。

そのウィンさんのメッセージは

コロナ禍の中、ミャンマー人が多く集まり、抗議していることを申し訳なく思っております。私たち自分の国の平和と夢のために頑張って生きるためなのです。
現在、ミャンマーで起きている事件は、もはや国内で解決できない問題となっています。
ミャンマー国軍が、国民の人権を無視した行動に出ており、民主性が損なわれています。他国でしか抗議できないことは恥ずかしく、そして申し訳なく思っております。国際連合をはじめとする先進国の方々の理解とご協力をお願いいたします。

というもので、その期待に何とか応えられないものだろうか。

ミャンマー」という呼称について 根本敬『物語 ビルマの歴史』(中公新書2014)から引用する。

……一九八八年九月に民主化運動を封じ込んで登場した軍事政権は翌年一九八九年六月に突然、英語の国名を「バーマ」から「ミャンマー(Myanmar)」に変更すると宣言した。……

……………

ミャンマー」(文語)と「バマー」(口語)に意味上の違いは見出せない。いずれも歴史的には狭義の「ビルマ民族」や彼らが住む空間を意味したからである。現在でいうカレン民族やシャン民族などの少数民族を含む国民全体を表す概念ではないことに注意が必要である。しかし、軍事政権は英語国名を「ミャンマー」に変更したとき、「ビルマ」と「ミャンマー」に意味上の違いが存在するかのような無理な説明を行った。それは「バマー」は狭義の「ビルマ民族」を指し、「ミャンマー」は少数民族を含む「国民全体」を意味するという解釈である。それに基づいて英語国名もビルマ語名称の「ミャンマー」に統一すべきだと結論づけたわけである。

軍事政権がつくりあげたこの新しい解釈はしかし、歴史的根拠に欠ける。……略……軍政の中核であるビルマ国軍の誕生と密接な関係を有する一九三〇年代の反英ナショナリスト団体タキン党(我らのビルマ協会)が、文語の「ミャンマー」ではなく、口語の「バマー」(英語のバーマ)こそ「ビルマ国民」全体の呼称としてふさわしいと主張し、その使用に力を入れた経緯が存在するからである。……

……………

……ビルマの国内外で反軍政側に立ってきた人々、すなわち民主化運動を支持してきた人たち……略……彼らは「クーデターで登場した軍事政権が国民の合意を得ずに英語呼称を一方的にミャンマーに変えた」ととらえ、その命令を非民主的と断じ、従うことを拒絶してきた。彼らは現在でも「バーマ(ビルマ)」を使いつづけている。民主化運動指導者のアウンサンスーチーも同じ理由に基づき、英語で発言するときは「バーマ」を使いつづけている。

……「英国」や「イギリス」という呼称は、江戸時代から一貫して日本語のなかで使われており、一九二七年に国名が「グレートブリテンおよび北アイルランド連合国」に確定しても、日本語による呼称をそれに合わせて変更するということはしなかった。英国政府からそのことに関して抗議を受けたという話も聞かない。一般に、相手側が国名を変えたからと言って、必ずしも自国語における呼び方まで変えなければいけないという原則はない。

公的姿勢では、難しい(弱腰!)かもしれないが、 市民的態度で「ビルマ」の呼称を使うことから始めましょう。

気になるのは、ウィンさんも「ミャンマー」と表記しており、「バマー」「ビルマ」「バーマ」という呼称が、若い人たちに認知されていないのでは、と不安にもなる。